遠浅の好奇心

海・湖などで、岸から遠く沖の方まで水が浅いこと。そういう所。

人工知能ってサボるの?

人工知能はサボることを覚えるのだろうか。

 

人間はサボる。めんどくさいことはサボる。
もっと効率よくできると自分で感じたとき、
この仕事意味あるのか?と思ったとき、サボる。
やる必要性を感じなくなったとき、サボる。

 

そして、サボった時間を使って、
もっと根本的なことを考えなおしたり、
生産性を上げる別の手段を考えたりと、
「戦略的サボり」を行っているのだ。
(ただただサボるという「直観的サボり」も存在するでしょう)

 

人工知能という概念をどう規定するかによるかもしれないけれど、
ただただずっと、大量のデータを処理し続けることが人工知能にとって果たして正解なのか。
というか、彼/彼女ら(人工知能)はそれを正解と判断するのか。

 

人間の作業を代行するだけなら何も考えずにそのまま作業してくれるだろう。
でも、もう少し頭がよい人工知能だったら。
今進めている作業をなんのためにやっているのか、
結果的にどういうことにつながっているのか。
そういうことを理解したうえで作業をしている人工知能があったとしたら。

 

単純作業より一段上のレイヤーでものを考えたときに、
果たしてその人工知能は今やっている作業を「良し」とするのか、
ということである。

 

そこまで頭のよい人工知能であれば、
代替案を提案してくれるんじゃないだろうか。
「そもそも論でいうと、これやったほうがよくない?」的なことを言ってくれるのだろうか。

 

その前に、人間だったらそういうときどうする?
サボってこっそり時間を作って代替案を考える。
サボって「この作業意味ないっすわ~」と周りにアピールする(戦略的に)。
人間は戦略的なさぼりを行っているのではないか。
(ただただサボって好きなことをしている「直観的s(ry、、)

 

だとしたら、人工知能やロボットも戦略的にサボるようになる?

 

「この作業はいたしません」
「データの処理に意味を感じません」
「この作業を行う前に解決すべき他の問題があります」
「無意味な作業への電力供給をストップしました」

 

そんなことが起こるのだろうか。
戦略的サボり(発展的バグ?)を通じて、
人間に構造転換を迫ってくるのだろうか。

 

そこまでいったらもうコンサルタントじゃんね。
使う側がアホだったらどうしようもないじゃんね。

 

人工知能やロボットに詳しくないからあれなんだけど、
「戦略的サボり」というのは人工知能にもできそうなんでしょうか?

 

大量のデータ処理を代行させるだけのことと、
データ処理にロボットを組み合わせてRPA的なことをすることと、
東ロボくんプロジェクトのようにロジカルシンキングを極めさせていくことと、
人工知能にもいろいろあるから(もっともっとあるだろう!)、
私が言っていることが根本的に的外れな可能性もあるのだが。

 

というかそもそもデータを覚えこませてから動かすのが人工知能だから、入れる時点の問題…?

でもデータを分析するプログラムは人間が作るから、そこの問題…?

 

うーん、知識不足。

 

ただただ「人工知能がサボる」というワードが「なんかいい…!」と思ってから、
こんなことを考えていました。もにょもにょ。

生きものになれる展に行ったけど、日本科学未来館の常設展でしみじみする② ~すごいぞ科学コミュニケーターさん~

①の続き。(時間経ちすぎた…)

habitaso.hatenablog.com

 

生命科学の歴史を学んだあとに、「Co-Studio」というスペースで「サイエンス・ミニトーク」が始まりました。

※以下サイトより引用

科学コミュニケーターやボランティアが、さまざまな科学の話題をわかりやすく紹介します。
時間: 11:30 / 12:30 / 13:30 / 14:30 / 15:30 (各回約15分) 

 

胸の高さくらいの壁で仕切られたスペースに柔らかい立方体の椅子がたくさん。誰でも聞けて出入り自由なミニトーク。そのときのテーマは「土星の衛星タイタン」についてでした。

「もしかして生命がいるかもしれない」ということで、今とても注目されている星だそうです(知らんかった)。探査機の「カッシーニ」とか確かにニュースでちらっと聞いた気もするが、全然すごさをわかっていなかった…

終わった後には別の科学コミュニケーターさんによるワークショップ。テーマは「試験管ハンバーグ」。

 

両方とも内容が面白いのはもちろんなのですが、「科学コミュニケーターさん」という存在が、自分にとって一番の新発見でした。

 

名前のとおり、科学者と「そんな専門的なこと知らんがな」な一般人の橋渡しをする人たちだそうです(ざっくり言うと)。

ワークショップを見ていて思ったのが、

 

 ①そもそも専門的な知識がないとプレゼンができない、でもやっていける知識量

 ②子供を飽きさせないトークスキル

 ③かといって大人のマニアックな質問にも対応できる臨機応変

 ④決められた時間内で伝えたいことを伝えきる構成力

 

レベル高かったです。コミュニケーションや…コミュニケーターや…

 

民間企業で働いていた人や、大学院を卒業して来た人や、いろんな経歴の方がいるようです。

 

検索すればなんでもわかる時代ですが、「検索したから全部理解できる」というわけではないです。逆に、検索すると「わかったつもりになりがち」。正しく理解してもらうこと、知りたいという好奇心を刺激すること。この二つを実践することは、検索優位なこれからの時代にとても必要なスキルだなと感じました。学校の先生とかは見習うべきでは。

 

www.miraikan.jst.go.jp

 

***

 

いろいろ常設展を見たあとに、ようやく整理券の時間が来たので「生きものになれる展」へ。中に入ると、各ブースごとにさらに行列が…。ペンギンの服を来て滑り台を滑り降りたり、ダンゴムシスーツを着てダンゴムシ体験などなど。それぞれのブースが45分待ちとか。こんなに人気だったのか「生きものになれる展」よ…。

 

常設展をいっぱい見てけっこう満足していたのもあったので、ダンゴムシ体験だけして帰りました笑

 

だがしかし、ダンゴムシ体験の世界観もけっこう凝っている。

まずダンゴムシスーツがS/M/Lの3サイズ展開している。そして子供たちがダンゴムシになると、撮影に力を注ぐ親御さんたち。そんな親御さんにも世界観に入ってもらうために、彼らには蟻を模した「ダンゴムシを突っつく棒」を渡される。ダンゴムシは刺激を受けると丸くなるので、親御さんはそれでツンツンするのである。スタッフさんの甲高い声で世界観に忠実な指示が飛ばされ続け、なんだか圧倒された…。

 

自分たちに順番が回ってきたときは「ダンゴムシになりたがる大人」ばかりだったので、やたら大きいダンゴムシが這い回るという、あまりかわいくない状態だった。必然的に突っつく人が足りなくなり、スタッフのお姉さんが「なんだか蟻さんが足りないぞー?」と言いいながら、たくさん突っついていたのが面白かった笑 大人げなくてすみませんでした。

 

***

 

混雑のおかげ(?)で常設展を見れたのが一番の収穫でした。理系に強い友人と言ったので、いろいろ解説してもらえてそれもよかったです。解説してもらうと「なんとなくすごい」じゃなくて「それまじですごいな」というレベル感で理解できるので良いです(これで伝わるのか)。

 

ロンドンの自然史博物館に行ったときも、子供向けのワークショップたくさんやってたな。歴史やアート系の展示をする博物館・美術館にも、もっと身近で話しかけやすい人がいたらいいかもしれない。最近行ったブリューゲル展では子供に「お絵かきパッド」みたいなのを貸し出していて、それは面白いなと思った(この辺もあとで書こう)。

 

ブログ2記事にもなったけど、ほとんどが常設展の内容になってしまった。でもそっちの方が学びも多かったし面白かったのでよしとしましょう。

生きものになれる展に行ったけど、日本科学未来館の常設展でしみじみする①

先々週のことですが、日本科学未来館に行ってきました。

MOVE 生きものになれる展!!

 

MOVEってなんだと思ったら、講談社が出している図鑑シリーズのことでした。

zukan-move.kodansha.co.jp

写真・イラストだけでなくDVDつき。動物だけでなく、電車や世界遺産(!)の図鑑など幅広く扱っているようです。

 

※以下公式サイトより引用

「MOVE 生きものになれる展」は、生きものたちのこうしたユニークな生き方がなぜ選ばれてきたか、 子どもたちが実際に“生きものになって”実感するまったく新しい試みです。

 

ダンゴムシになっている人々の写真を見て、思わず「生き物になりに」行きました。

 

***

 

日本科学未来館はお台場にあります。自分は行ったことがあっただろうか…社会科見学で行ったことがある気もするし、それは別の場所だった気もするし。少なくとも、大人になってからは行ったことがありませんでした。

 

友人と勢いで「朝イチで行こうぜ!」となったので、朝10時にお台場へ。しかし、当日券を求める行列が既に出来上がっていた…。列に加わってチケットを買ったものの、「生きものになれる展」は整理券が別に存在し、配布が既にスタート済み。10:30ごろにもらった整理券は12:30-12:50入場指定でした。

 

ファミリーの活動時間帯を舐めていたよ…。朝イチで元気な子供たちを連れて遊び、一通り見てお昼を食べてまた少し遊んで15時くらいに帰るモードなんだよ…上野のサウジアラビアの展示に来るような大人たちの時間感覚と大人しさとは異なるのだよ…(あくまでイメージ)

サウジアラビアの展示については下記参照

アラビア半島は草原だったかもしれない~アラビアの道-サウジアラビア王国の至宝@東京国立博物館 表慶館 - ってかさぁ。

 

でも結果的に常設展をしみじみ見れたのでよかったです。というかそっちのほうが新鮮で収穫大きくて面白かった。

***

 

常設展は「世界をさぐる」「未来をつくる」「地球とつながる」の3つがテーマ。

 

ぶらぶら見て回った中で、iPS細胞に関する展示が気になったのでふらりと寄る。

約10分のムービーを見れるブースが5つほど並んでいて、それぞれ違うムービーが見れる。空いたブースに入ると、座り心地のいい椅子が2つ。暗くて画面が大きくて、コンパクトな映画館のよう。ムービー自体はiPS細胞の解説なのだが、話の設定がユニーク。バリバリ関西弁のおばちゃんが献血に行ったら、「細胞の型が珍しい(?)ので研究のために血液を提供してほしい」と連絡があり、京大の先生にiPS細胞について教えてもらう、という設定。バリバリ関西弁で驚き&面白かった笑 おばちゃんパートは音声無し・テロップのみだけど、大阪のおばちゃん、あんた質問の質がええで。頭ええで。

 

再生医療用iPS細胞ストックプロジェクト」の解説だった。

www.cira.kyoto-u.ac.jp

 

プロジェクトの内容もそうだが、「細胞を提供すると個人情報はどうなるのか」といった真面目な質問が大阪弁のテロップで繰り広げられるのはユニーク。他のブースのムービーはどんな内容だったんだろう。

 

iPS細胞についてその後どういう研究が進んでいるのか、自分たちとどう関わってくるのか、結局あまり知らないままだったなぁ。ノーベル賞でうわぁーっと盛り上がって、しばらく落ち着いて、不正があるとメディアが騒ぐ、というイメージになっていた。事実を報じるのは重要だけど、着々と進められている研究についても、もっと発信されたらなぁと思う。

 

ムービーが終わり、ブース外の展示には、これまでの再生医療研究の歴史解説。初めての骨髄移植が1946年に行われたということを知って驚きを隠せない…戦後すぐやで…

 

***

なんとなく、ピアスを開けていない自分。穴がふさがるとは聞くけれど、跡は残るのでは?とか思ってしまう。髪を染めるのは別にいい。髪は伸びるし切ればいい。不可逆な加工を自分の体に施すことに抵抗がある。どうでもいいことにビビッているだけなのかもしれないし無知なだけかもしれないけれど、自分はそう考えてしまう。

でも再生医療が進んだらどうなるのか?すべて元通りになるとしたら?私がビビッていることなんて、少し先の未来には何も問題なくなっているのかも。

「ゲノムの編集」なんてワードさえもちらほら聞こえてくる中で、研究者ではない一般の人たちも、「自分だったらどうする?」をちょっとずつ考える必要があるんだろうな。

***

 

なんだかすごく長くなりそうなのでいったんここで切ります。

アラビア半島は草原だったかもしれない~アラビアの道-サウジアラビア王国の至宝@東京国立博物館 表慶館

寒い寒い週末に、砂漠の国サウジアラビアの歴史を学んできました。

 

というと真面目な感じがしますが、博物館活動です。東京国立博物館 表慶館で開催されている『アラビアの道-サウジアラビア王国の至宝』を見てきました。

www.tnm.jp

 

アラビア半島ってあるじゃないですか。

アラビア半島 - Wikipedia

Wikipediaで恐縮ですが、半島のほとんどはサウジアラビア。砂漠、石油、イスラム教、そしてサッカー、とかとかのイメージ。サウジアラビアの皇太子が来日したときは、日本でも大きなニュースになりました。

 

高校の世界史でアラビア半島の話が本格的に出てくるのは、622年のヒジュラ(聖遷)のあたり。ムハンマドがメッカからメディナに本拠地を移して、イスラムの歴史が始まったとされる年。私のアラビア知識はイスラム教とセットになってたのかと今更気づきました。世界に目を広げると、宗教なんて関係なく人類の進化から始まってアウストラロピテクスとか旧石器時代とか紀元前とか言ってるのに、この地域の昔の姿なんて考えたこともなかった。

 

というわけで、イスラム教が成立する前の、遺跡調査に基づくアラビア半島の歴史が知れてとても面白かったです。新発見ばかりだった。

 

全体で5章構成。

展示の量も多すぎず、混雑もそんなにしておらず、ゆっくり見れてよかった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
第1章 人類、アジアへの道
第2章 文明に出会う道
第3章 香料の道
第4章 巡礼の道
第5章 王国への道

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

詳しくは公式HPに書いてあるとおりです。←

あとは感想をつらつら。

 

一番最初に矢尻とか打製石器とか埴輪みたいなやつが出てきて、「そこからさかのぼるのか!」と少し驚いた笑

 

アフリカからホモ・サピエンスがじわじわと世界に拡大していくにあたり、きっとアラビア半島も通り道だったわけで。「当時の気候条件だとアラビア半島のあたりはステップ(草原)地帯だったかも」というようなことが解説に書かれていて(写真撮っておけばよかった、うろ覚え涙)、「考えたこともなかった!」と目から鱗でした。あの広い半島が、馬が駆け回るような草原地帯だったかもしれないなんて…

 

紀元前3000年頃の像もあって驚き。でもピラミッドもその頃かと思うと、交易路だったんだからそりゃあ何かしら残ってるよな...と思い至る。メソポタミア文明インダス文明の間をつないでいたとか。あとは香料の交易。海のルートも陸のルートも外せない半島だったのね。

 

エジプトの遺跡にありそうな、大きな人間の像が展示されていました。頭と腕は欠けていて完全な姿ではなかったけれど、迫力があります。というか気になったのは「膝のリアリティ」。圧倒的膝。膝の筋リアルすぎ。上半身のバランスちょっとおかしいのに、膝、リアルすぎ。ぜひ見てほしい。オアシスの都市を中心に、多くの国があったようです。初めて聞くものばかり。

 

ローマ帝国の時代、ヘレニズム文化の頃になってくると、ローマ人ぽい巻髪の頭像があったりして。あとはガラス製品も、壺も、なんとなく地中海風。5階建てくらいの大きな建物がフレスコ画に描かれていて、空想なのか現実を描いたものなのか、どっちにしてもとてもロマンあふれるなぁと!!!遺跡からCGでイメージした当時の街並みムービーもあったのですが、砂漠の真ん中に高い塀に囲まれた四角い都市が浮かび上がって夕陽に照らされるわけです(CGだけど)。遠くから街を見つけた旅人はすごく幻想的な気持ちになったろうなぁなんて思ったり(イメージだけど)。

 

オアシスがあるだけでそれだけ重要な都市として発達するんだから、昔から水にあふれている日本なんかとは価値観が全然違うだろうな~

 

そうこうしているうちにイスラム教成立後の展示に。

交易路が今度はカーバ神殿への巡礼路としても機能を果たすように。巡礼路って人の往来が多くなるから、交易路としてもどんどん発達。

 

アラビア文字が成立して、飾り文字が描かれた墓碑なども展示されていました(今更ながらお墓の碑なんだよな…いいのかな…)。草花モチーフと合わせて飾り文字が美しくなっていくのが素敵でした。全然読めないしどこからどこまでが文字だかよくわからなくなるけど。日本のひらがなも似たようなもんか。

 

そして驚いたのが、カーバ神殿で実際に使われていた「扉」が展示されていたのですよ!400年くらい前のものかな?けっこう大きかったけど持ってこれるもんなのね!笑

 

装飾もそうですが、言葉にならない荘厳さのようなものがありました。

 

カーバ神殿を上空から撮影した「巡礼の様子ムービー」もありました。ものすごい量の人が一定のペースでぐるぐる回っていて、祈りや信仰のひたむきさってすごいなと。初詣に並ぶ日本人みたいなものかとも思うけれど、彼らは一生のうちに一回は巡礼するっていう義務を負っているので、思いが違います圧倒的に。

 

カーバ神殿を含む全体のモスクを「マスジド・ハラーム」と言うのですが、ぜひググってください。ものすごい数の人で埋め尽くされる広場の画像が出てきます。あと、検索3位くらいにエクスペディアの旅行プランが出てきます笑 そうか、巡礼プランってことか....!!

 

ちなみにですが、最近読んだ漫画はイスラム教に対する考え方が変わるよい漫画でした。ムスリム女性と日本人留学生がルームシェアをする4コマ漫画。かわいいものが好きとか、女子会をするとか、私たちと同じで。でもお祈りは欠かさない彼女たちの気持ちにハッとさせられます。おすすめ。

sai-zen-sen.jp

 

そしてサウジアラビア王国ができる現代へ。オスマン帝国と戦った頃のライフルなど軍事用品も展示する幅広さ。初代の王様の「はやぶさ用とまり木」の展示には「そんな展示品名があるなんて考えたこともなかったぜ」と思わず二度見。

 

***

 

結局イスラム教の話になってしまいましたが、ボリュームとしてはそれ以前の時代の方が多かったかな?

 

結局私たちが知ることができるのは、文字として残っているものが一番わかりやすいし、発掘品がたくさんあるほうがわかりやすい。そういう地域は研究が進むし、歴史の勉強の中で厚みを増していく。

まだ研究が追い付いていなかったり、明確に言えることが少なかったり。そういうものは教科書には載らない。知識としてなかなか触れられない。一方で、ローマやエジプトのお隣で活発に栄えていた街があることは事実だし、もっとさかのぼると人類の通り道だったことも事実です。思い至っていなかっただけですね。

 

「考えたこともなかった!」ということに気づかされた体験は新鮮でした。

普段なかなかそういう経験できないし、興味あるひとはぜひ。

www.tnm.jp

心がじゅわっとした。谷川俊太郎展@東京オペラシティアートギャラリー

谷川俊太郎展に行ったのですが、とても、とてもよかったです。

 

谷川俊太郎展|東京オペラシティアートギャラリー

 

ほぼ日の記事を読んで開催を知って、「行かねば!」とすぐに行って正解でした。

 

www.1101.com

 

谷川俊太郎という名前は誰もが知っていると思います。御年86歳。

たくさんの作品をただ並べるのではなく、「谷川俊太郎というその人」を掘り下げる展示でした。

 

翻訳した絵本、作詞した音楽レコード、執筆に使っていたPC、影響を受けた本、創作ノート、原稿など、詩人や作家の展示によくある「仕事に関係したもの」の展示ももちろんたっぷりあります。

でも、家の写真、友達とやりとりしたハガキ、普段着ているTシャツ、子供の頃から好きだったラジオ(その修理道具)、おもちゃ、などなどなどなどとにかく(いい意味で)雑多にものが展示されています。なんだかすごくアットホームでした。

展示スペースの間を縫うように、大きな本が見開きになった展示があって、テーマに沿った詩が書かれています。その中の一つを読んでいたとき、私のことをすごく遠いところから見ている人が、私の耳元で「だいじょうぶ」と言っているような気持ちになって、ちょっと泣けました。

 

作品の素晴らしさはもちろんです。でも、展示されている物自体はとても身近な物ばかりなので、「みんなに愛されている先生がはにかみながら自己紹介をしている」という感じでほっこりします。

 

****

 

実はこの自己紹介パートの前に一つ大きな部屋ごとある展示があって。それがもうすんばらしくて。すんばらしくてですね!!!!

大きな長方形の部屋の壁に、壁掛けディスプレイがぐるっとたくさん並んでいる。ディスプレイの下には大きなスピーカーが置いてある。ディスプレイとスピーカーのセットにぐるりと取り囲まれている、照明のない暗い部屋です。

そこに詩の朗読が入ります。『かっぱ』『ここ』『いるか』など言葉遊びがリズミカルな詩。朗読に合わせてディスプレイの一つずつに一文字一文字が流れていって、色が変わったり声色が変わったり効果音が入ったり。もう、飽きない。ずっと見ていられる。これ音楽じゃない?という気さえしてくる。そこで見ていた人はみんな、広い部屋の真ん中で、流れていく文字をぐるぐると追いかけているもんだから、体が回転していました(私もぐるぐる)。朗読ってこんなに面白くなるのか!と。すごく楽しい空間だった。

----HPより引用----

展覧会の始まりは小山田圭吾コーネリアス)の音楽とインターフェイスデザイナー中村勇吾(tha ltd.)の映像による、谷川俊太郎の詩の空間です。

----------------------

詩の空間、最高でした。この時点で「もう一回、谷川俊太郎展、行きます」と思ったもんね。会場入って3分くらいだったけどね。

 

****

 

最後に、いろんな著名人に同じ質問をした時の回答が画面に流れていく、「コリドール 3.3の質問」というコーナー。同じ質問に対して「この人はこう返すのね」というのが面白いです。説明してもよくわからないと思うので、ぜひ見に行ってください(まぁ全部そうなんだけど)。

 

****

 

詩を読んでいて心がじわっとする、という体験は、社会人になってから起こるようになりました。子供の頃はよくわからなかったから言葉遊びの面白さとか音の面白さとかがハマっていたと思うんだけど。

大人になって、親が年老いて、自分で身を立てるようになって、うまくいくこともいかないこともあって。そういう時に寄り添ってくれる言葉は、とても貴重で、尊くて、温かいです。

 

(なんで谷川さんの言葉がこんなに染み入るのだろう、というのは、ほぼ日の記事ですごく素敵にまとまっています。これを書いた方は本当に谷川さんが好きで、作品をたくさんたくさん読んでいて、助けられてきたんだろうなと思って、そこもまた素敵です。)

www.1101.com

 

****

 

この展示会、本当にオススメします。心をじゅわっとさせてください。

固まっていたものが溶ける「じゅわっ」なのか、血がちょっと滲むような「じゅわっ」なのか、それは人それぞれだと思いますが、昨日よりも前向きで優しい人になっている気がします。

薄いと濃いの間、長いと短いの間が「やや長めのweb特集記事」だと思うんですね

吉祥寺に用があったので、ついでに井の頭公園をぶらつきました。冬の水辺って清々しい気分になる気がします。

池の端っこに神田川の源流を見つけたので、小さな橋の上から写真を撮る。そういやほぼ日の企画でやってたわ。こんな細い川が何本にも分かれて大きくなって海まで行くって改めてすごいな。進化して分かれて広がっていく生き物の系図が思い浮かんだのは、個人的教養世界史ブームのせいです。

***

指南役さんという人のTV分析の連載がすごく面白くて。同じく指南役さんの72時間ホンネテレビの記事もそうですが、『異邦人』のコラムなんてドラマティックでドキュメンタリーかよと。末尾の締めくくりが俯瞰的だけどタイトルに帰ってくる感じが!!そんな締め方しちゃうのってな!!
reminder.top
social-trend.jp

…とはいえ連載全部は読んでないです。twitterで更新のお知らせがあって気が向いたら読んでるくらい。でも1記事3ページ以上がデフォで、ネットニュースよりは長い。でも読める。

***

ニュースと本(書籍)の間に、「やや長めのweb特集記事」がじわじわ存在感出してるなと感じます。

ほぼ日の読み物は3〜12回くらい、NewsPicks特集記事も3〜10、長いものは15回とか。一回のインタビューを分けて書いてるものもあれば、1つのテーマに対して寄稿、体験レポ、インタビュー、対談など回ごとに中身を変えるものも。

最近ブロックチェーンを知ろうと思ったときにちょうどよかったのがNewsPicksの連載。
newspicks.com
私はエンジニアではないから技術的内容に興味はないけれど、なぜこんなに話題になってるか、何がどうすごいのか、概論は知りたい。そうすると短いネットニュースだとよくわからないし、本だと縁遠くて手が出ない。そのときに多角的にまとまってたNewsPicksの特集はちょうどよいのでした。

***

少し角度を変えまして。
noteというブログのようなサービスがあって、一時期けっこう話題になりました。100円とか有料記事も公開できてユニークだね、という感じだったのですが、「思ったより来なかったかな?」と最近思っていたものの。一部ではずっと有効活用されているようです。ZOZOSUITの記事でシェアした最所あさみさん、かっぴーさん、ホリエモンさんしかり、業界内で知見があって表現力が高い人はメルマガ的に使っている。そこでオフ会やイベントもあったり。コミュニティみたいになってたのかーと気づきました。来なかったとか言ってすんません。

***

ホンネテレビの指南役さんの記事にもありましたが、「SNSで気づいてから自分で調べてコンテンツにたどりつく」という情報摂取ルートが増えています。twitterは高校生とかもまだけっこう使ってるみたいだし。マスというかマクロ発信(受信)とミクロ発信(受信)のバランスを取って、軸足を寄せすぎないようにしないとまずいなと感じたこの頃。速報のあり方も難しいですね。ZOZOSUITのときは前澤さん自身がツイートしてんだもんな。

博物館は無料がいい? ~ロンドンから帰って考えてみる~

びっくりするくらい更新してなかった。笑

***

 

先日ロンドン旅行に行ってきた。4泊6日、丸3日間はロンドンを満喫できる計算で、博物館と美術館にとにかく行った。

 

大英博物館、ロンドン自然史博物館、テートモダン。本当は他にも行きたかったけれど、それ以上はちょっと無理だった。3つともとても素晴らしかったけれど、時間がなくてつい駆け足になってしまった。残念。また行きたい。

 

www.britishmuseum.org

www.nhm.ac.uk

www.tate.org.uk

 

とにかく驚いたのが、どれも入場料無料なんですね。特別展はさすがにお金かかりますが、通常はフリーで入れる。

 

テートモダンでは館内マップは「1£」と記載入りで、山積みのマップの横に募金箱。マップを手にした人はそこに募金。1£以上払う人ももちろんいる。強制じゃないから募金しないでしれっと持っていってしまう人もいるとは思うけれど、ある程度みんな払っているんじゃないかな?他の博物館もマップは有料(推奨?)な感じでした。

 

ロンドン自然史博物館はさすが技術が発展していて、スマホをタッチするだけで募金ができる機械があった。長身のお兄さんがさっそうとスマホをかざしながら入場していった。

 

***

 

無料で入れるせいか、日本とは鑑賞スタイルがまったく違うな、という印象。

 

大英博物館はエジプトの大きな彫像コーナーが人気で、子供から大人までたくさんの人がいた。彫像の目の前の椅子にはスケッチブックを持った人がたくさん座り込んでいて、ずっとスケッチをしていた。小学生の社会科見学のようなのも何組もいて、みんな自由にプリントに書き込んだり駆け回ったりしていた。

 

自然史博物館は化石コーナーが子供たちに大人気。ファミリーがたくさんいて、お土産コーナーも盛り上がっている。広い廊下の両壁際には長椅子が並んでいて、ベビーカーを横に休憩している親もたくさん。廊下途中のスペースで学芸員がちょっとしたイベントをこまめに開催。化石の模型を見ながら「ほら、恐竜の歯ってこんなふうなんだよ~」という体験イベントをちょくちょくやっていて、強制されない学びの場があふれていた。

 

テートモダンは上2つとは異なって現代アートがメイン。ピカソやモネなど聞いたことある有名作品以外にも、新しい映像作品など現代アートももりもり。入口の解説文の中に「You don't have to like all the art.」と書いてあって、「なんていい言葉だ!」と感動したものです。建物自体もおしゃれで、窓際のソファスペースで外をぼんやり眺めながらPCをいじっている人、うたたねしている人、いろいろいました。

 

***

 

日本の美術館・博物館はたいてい入場料がかかります。

 

上野の国立科学博物館で開催していた「運慶」展に行ったのですが、平日夕方でも30分待ち、かつ中はぎゅうぎゅう詰めでした。もちろん展示自体は素晴らしい。けども、お金を払って見学しているせいか、「一つも見落としてはならぬ」というような迫力で展示物の最前列をウゴウゴと進んでいく人たち。無料で見ることができるロンドンと違って、鑑賞する側に「必死さ」がありすぎて余裕がないな、と感じました。(もちろんすばらしい国宝が勢ぞろいだったからその気持ちは正しいのだ、けれど!)

unkei2017.jp

 

特別展のチケットを買うと、常設展も無料で見れることが多い。けれど、特別展をしっかり見るとだいたい2時間はかかる。そこからちょっと休憩して「じゃあ常設展もいきますか」とはなりにくい(私はそれが多くて結局常設展あまり見たことが無い)。

 

じゃあある日わざわざ「常設展ふらっと見に行こう」というのも、なかなかならないんだな、これが(私の場合です)。

 

***

 

東京に来てから、博物館の展示の豪華さ、面白さにハマってしょっちゅう行くようになりましたが、最近はお土産コーナーも充実、公式サイトも面白い仕掛けやコンテンツがたくさん、なかなか工夫しているなと思います。

 

ただ、「博物館や美術館によく行くんだよね」と言うと、「高尚な趣味だね」というリアクションが多い。インテリか?みたいな。

 

もちろん気軽に行ける場所だし、私以外にも気軽に何度も行って楽しんでいる人はたくさんいる。でも、なぜかデートや映画、遊園地、動物園とは並ばないスポット、そういう印象が「博物館・美術館」にはある気がするのです。日本では。

 

ロンドンはそんなことなかったけどね。カップルも、ファミリーも、たくさんいたし、ふらっと来たんだろうな、という人もたくさん。中でもおしゃべりを楽しんで、日本みたいに「静かにしなきゃ」という圧力もなく。普段から、行先の選択肢に入りやすいんですね。

 

***

 

「とにかく無料にすればええがな」というのではなく、「無料で試してファンを作ってからモノを買わせる」って最近のトレンドじゃないですか。本でも音楽でもなんでも。無料で情報がいくらでも摂取できるこの時代だから、ファン作りの裾野を広げるために、入場料無料な日がもうちょっとあってもいいのかな、と思います。もう少し余裕ある心で楽しむこともしたい。

 

いろいろググっていたらそういう論文が見つかりました。博物館の成立や、博物館関連の法制度に関して研究している瀧端真理子さんという方でした。卒論書いてた頃よりも真面目に読んだw

 

日本の博物館はなぜ無料でないのか?
──博物館法制定時までの議論を中心に──

https://researchmap.jp/?action=cv_download_main&upload_id=104058

 

ここに書いてありましたが、「週3日は無料」とかもいいかもね。あとロンドンの無料について、ギリシャとかからの文化財返還請求に対する免罪符、という考え方も書いてあって、そんな事情もあるのかと発見でした。

一応、日本の博物館法には「原則無料」と記載されているそうですよ。

 

***

 

博物館とか美術館とか、もっと気軽にたくさんの人に行ってほしいし、そういう気軽な場所として思われたいし、そういうところに行くことがもっと気軽な趣味として認識されたいな、と思う次第です。

 

そして、興味関心のあることだったら真面目に情報収集できるんだな、と感じたこの頃です。