遠浅の好奇心

海・湖などで、岸から遠く沖の方まで水が浅いこと。そういう所。

心がじゅわっとした。谷川俊太郎展@東京オペラシティアートギャラリー

谷川俊太郎展に行ったのですが、とても、とてもよかったです。

 

谷川俊太郎展|東京オペラシティアートギャラリー

 

ほぼ日の記事を読んで開催を知って、「行かねば!」とすぐに行って正解でした。

 

www.1101.com

 

谷川俊太郎という名前は誰もが知っていると思います。御年86歳。

たくさんの作品をただ並べるのではなく、「谷川俊太郎というその人」を掘り下げる展示でした。

 

翻訳した絵本、作詞した音楽レコード、執筆に使っていたPC、影響を受けた本、創作ノート、原稿など、詩人や作家の展示によくある「仕事に関係したもの」の展示ももちろんたっぷりあります。

でも、家の写真、友達とやりとりしたハガキ、普段着ているTシャツ、子供の頃から好きだったラジオ(その修理道具)、おもちゃ、などなどなどなどとにかく(いい意味で)雑多にものが展示されています。なんだかすごくアットホームでした。

展示スペースの間を縫うように、大きな本が見開きになった展示があって、テーマに沿った詩が書かれています。その中の一つを読んでいたとき、私のことをすごく遠いところから見ている人が、私の耳元で「だいじょうぶ」と言っているような気持ちになって、ちょっと泣けました。

 

作品の素晴らしさはもちろんです。でも、展示されている物自体はとても身近な物ばかりなので、「みんなに愛されている先生がはにかみながら自己紹介をしている」という感じでほっこりします。

 

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実はこの自己紹介パートの前に一つ大きな部屋ごとある展示があって。それがもうすんばらしくて。すんばらしくてですね!!!!

大きな長方形の部屋の壁に、壁掛けディスプレイがぐるっとたくさん並んでいる。ディスプレイの下には大きなスピーカーが置いてある。ディスプレイとスピーカーのセットにぐるりと取り囲まれている、照明のない暗い部屋です。

そこに詩の朗読が入ります。『かっぱ』『ここ』『いるか』など言葉遊びがリズミカルな詩。朗読に合わせてディスプレイの一つずつに一文字一文字が流れていって、色が変わったり声色が変わったり効果音が入ったり。もう、飽きない。ずっと見ていられる。これ音楽じゃない?という気さえしてくる。そこで見ていた人はみんな、広い部屋の真ん中で、流れていく文字をぐるぐると追いかけているもんだから、体が回転していました(私もぐるぐる)。朗読ってこんなに面白くなるのか!と。すごく楽しい空間だった。

----HPより引用----

展覧会の始まりは小山田圭吾コーネリアス)の音楽とインターフェイスデザイナー中村勇吾(tha ltd.)の映像による、谷川俊太郎の詩の空間です。

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詩の空間、最高でした。この時点で「もう一回、谷川俊太郎展、行きます」と思ったもんね。会場入って3分くらいだったけどね。

 

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最後に、いろんな著名人に同じ質問をした時の回答が画面に流れていく、「コリドール 3.3の質問」というコーナー。同じ質問に対して「この人はこう返すのね」というのが面白いです。説明してもよくわからないと思うので、ぜひ見に行ってください(まぁ全部そうなんだけど)。

 

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詩を読んでいて心がじわっとする、という体験は、社会人になってから起こるようになりました。子供の頃はよくわからなかったから言葉遊びの面白さとか音の面白さとかがハマっていたと思うんだけど。

大人になって、親が年老いて、自分で身を立てるようになって、うまくいくこともいかないこともあって。そういう時に寄り添ってくれる言葉は、とても貴重で、尊くて、温かいです。

 

(なんで谷川さんの言葉がこんなに染み入るのだろう、というのは、ほぼ日の記事ですごく素敵にまとまっています。これを書いた方は本当に谷川さんが好きで、作品をたくさんたくさん読んでいて、助けられてきたんだろうなと思って、そこもまた素敵です。)

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この展示会、本当にオススメします。心をじゅわっとさせてください。

固まっていたものが溶ける「じゅわっ」なのか、血がちょっと滲むような「じゅわっ」なのか、それは人それぞれだと思いますが、昨日よりも前向きで優しい人になっている気がします。