ってかさぁ。

この接続詞の続きはたいてい役に立たないけど、でも言いたくなることを書きためるブログです。

アーティストの在り方~ブラジル先住民の椅子 野生動物と想像力@東京都庭園美術館

東京都庭園美術館で開催されている展示を見てきました。

www.teien-art-museum.ne.jp

 

駅貼りのポスターで見かけて気になったので。本当は上野でやっているエッシャー展(http://www.escher.jp/)に行きたかったけれど、ものすごく混雑しているようなので、前から気になっていた庭園美術館に行くことに。

 

初めて行ったけれど、場所も展示も素晴らしかったです。

書いているうちに、展示で受けた感想と建物から受けた感想がごちゃごちゃになりそうなので、まず展示自体について書きます笑

 

まず概要をサイトから。

南米大陸、ブラジル北部のアマゾン河やシングー川流域で暮らす先住民の人びと。彼らの作る一木造りの椅子は、動物のフォルムや機能的なフォルムに独特な幾何学模様が施されており、ユニークな造形作品として捉えることができます。元々、先住民にとっての椅子は、日常生活の中で使用したり、シャーマンによる儀式や結婚式等の特別な機会に用いるなど、彼らの生活や伝統、独自の神話と色濃く結びついており、コミュニティ内の文化的・社会的なシンボルでもありました。それが今日、コミュニティの外との繋がりから刺激を受けて、自らのアイデンティティを自然を捉える眼に求め、用途や伝統に縛られないより多様かつ自由な表現が生まれてきています。

東京都庭園美術館|ブラジル先住民の椅子 野生動物と想像力|2018年6月30日(土)-9月17日(月・祝)

 

一本の木から削り出される椅子。動物をモチーフに様々な模様が施された椅子が、館内のそこかしこに展示されていました。

 

ヒョウや鳥、猿、バク、いろんな動物がモチーフになっていて、それぞれ個性があって愛らしかったです。猿はしっぽがくるんと丸まっていたり、バクは長い鼻にモダンな模様が描かれていたり。目がキラッとするなと思ったら貝を埋め込んでいるものもありました。凛々しいヒョウと思ったらぺろっと舌が出ていたり。一本の木から5個くらいの椅子を作るそうですが(サイズにもよるけど)、どの椅子もニスを塗ったかのようにきれいに脂がのって(?)いて、美しかったです。模様が目立ちすぎることもなく、動物らしさとアートらしさのバランスが素敵でした。

 

ただ、見ていて違和感があったのが、作品説明。美術館に行くと、たいてい作品の脇に作品名など情報をまとめた小さいボードがありますね。タイトルはもちろん、作者の名前、制作年代、作品の材料。有名作品であれば、その作品にまつわるエピソードもまとめてある。「美術館が混むのはみんながこれをじっくり読んでいるからでは?」と思ったこともあるくらい。作品には「補足情報」がセットで、それを見て「なるほど、これはこういう作品なのね」と情報をインプットしながら鑑賞することが多いです。

 

今回の椅子。作品の横にあった補足情報は、以下3点のみ。

・モチーフになった動物

・制作した先住民族の名前

・制作者名

 

ほぼ作品情報がない。

しかも「作者不詳」なんてのも多い。

 

先住民族の名前は、入場の際にもらうパンフレットに解説が載っていたので、それを読んで、ふむふむと。今回は17の先住民の作品が展示されていたのですが、それぞれの先住民ごとに作風が違うようで、それについてパンフレットに細かく記載されていました。

 

動物は見たらわかるものが多かったけれど、作品名がないので、ある意味それ自体を見て楽しむことができました。「なんだこれ?」って思ったのは「エイ」くらい笑

 

特に困ったのが、制作年代がない。いつ作ったんだろうと思いました。古いのか、新しいのかよくわからない。そんなに傷んでいないものも多いし。古ければ「昔からこんなにアーティスティックで素敵だったのね」とか、「よくこんなのが残っていたね」とかの感想を持つし、新しければ「今もこんなモダンなものをジャングルで創っているのか」みたいな感想を持つし、「いつ」作られたのかってけっこう意識するよね。

 

それがないので、古いのか、新しいのか、もやもやしたまま展示を見続けました。モノじたいは面白いし素敵だな、とは思うんだけど。

 

展示は本館→新館と移動して後半へ。新館には映像作品がありました。実際に現地の先住民が椅子を作っているところを取材した映像17分。先住民に東京都庭園美術館の館長 樋田豊次郎さんがインタビューする取材映像25分。17分のほうだけ見て終わりにしようかな、と思っていたけど、想像以上に面白くて見入ってしまいました。

 

森に入っていって、木を切り倒す。その場で木を5つくらいに分けて、椅子の大枠を作る(ジャングルの中で!)。持ち帰れるサイズ、重さになったら村に持ち帰って、細かい仕上げ作業へ。彼らはそれぞれがアーティストで、子供のころから親兄弟が作っているのを見ながら学んで、個々人の感性で椅子を作っていく。それが現代も続いている。

 

ここまで、見て、ああ、だから制作年代がないのかと思いました。今も続いている作品なのだから。

 

そのまま25分のインタビュー映像へ。ここが激熱だった。

メイナクという先住民の兄弟に、館長がインタビューしている映像。ここで、すごく印象的だった言葉が、

「私たちは、自分たちの作っている椅子を『民芸品』と呼ぶのをやめたのです。『木彫芸術品』と呼んでいます。」

 

アーティストなのです、彼らは。先住民特有の珍しさとか、希少性を売りに出すのではなく、自分たちが一つずつ手作りで、自分たちのセンスで作り続けている椅子を「作品」として世に出したい、認められたい。そういう目的意識、プライドを感じました。

 

サンパウロビエンナーレという国際的なアートの展示会にも彼らの椅子は出展していて、それを機に取材も多く増えたと。「先住民」という枠組みで椅子を作っているのではなく、先住民族それぞれで創り方も考え方も違うし、それぞれの暮らし方も違う。自分たちの存在自体をアピールするきっかけにもなったと話していた。

 

そうして外の人から作品を買いたいと言われたり注目されたりすることを通して、彼らは「先住民が自らの言葉で自らの芸術を語る必要がある」と感じる。自分たちは文字の文化がないから、口承で代々作り方を継承してきた。インタビューに応えていたメイナクの兄弟はポルトガル語を学び、外に情報を発信する。一方で、先住民族が作っている椅子それぞれについて、何をモチーフに誰がいつ作ったのか、何に使うものなのか(日常品か祭事用かなど)、材料の木はどのように選ぶのか、染料はどうしているのか、作り方や作品自体について記録を残すことにしたと言う。今までは残っていなかったから。

 

インタビューの中で「もし白人に『こういうモチーフで作ってくれ』と依頼をされたら、自分たちのアートのこだわりがあったとしても、注文を受ける?」という質問があった。ここでメイナクの兄弟は「喜んで受けると思う。新しいことにチャレンジできるから。自分たちの技術の幅が広がっていくから」と言っていて、すごく意外だった。伝統を守るという保守的な思考ではなく、技術を高めていくためにチャレンジをいとわないし、それを楽しんでいる。

 

彼らにとって外貨獲得手段でもあるアートとしての椅子の販売。まだ安価に扱われていると彼らは言う。「自らが自己評価を高めていく必要がある」と言う。

 

ただの民芸品やら伝統やら言っている人たちではない。彼らはアーティストであり、プロデューサーであり、自分たちの先住民としてのアイデンティティを守りながら世に発信していく、一人ひとりがその目的意識のもとに常にチャレンジを続けているのだ。

 

美術館や博物館にはよく行くけれど、「アーティストの在り方」というものに心をこんなに動かされたのは初めてでした。今回の展示は、あのインタビュー映像があってこその展示だと思います。

 

伝えたいものが明確な人というのは、こんなに強いのか、と感じました。

 

9月までやっているので、是非皆さん足を運んでください。

そんなに混んでないし、建物自体も美しくて素敵だし、格式ばってないし。

とてもおすすめです。ほんとに。