遠浅の好奇心

海・湖などで、岸から遠く沖の方まで水が浅いこと。そういう所。

リトグラフとエッチングの違いを学んだ~終わりのむこうへ : 廃墟の美術史@松濤美術館

渋谷の松濤美術館で「終わりのむこうへ : 廃墟の美術史」という展示を見てきました。

終わりのむこうへ : 廃墟の美術史|松濤美術館

以下、HPより引用。

栄華や文明の痕跡を残しながら崩れ落ちようとする建造物や遺跡。「廃墟」は西洋美術のなかで、風景画の一角にくりかえし描かれていました。18世紀から19世紀にかけて、興味深いことにいわゆる廃墟趣味が流行すると、「廃墟」は絵画の主役の地位を確立していきます。(中略)なぜ人々は、流れる時間のなかで滅びた、またはいつか滅びてしまう、遠い昔のあるいは遠い未来の光景に、惹きつけられるのでしょう。
この展覧会では、西洋古典から現代日本までの廃墟・遺跡・都市をテーマとした作品を集め、これら「廃墟の美術史」をたどります。 

 

美術館はこじんまりしているし、誰もが知っている名画が日本にやってきた!という展示ではなかったのですが、たまたまこの「廃墟の美術史」のポスターを見かけて気になってしまい。あと松濤美術館は名前は知っていたのですが行ったことがなく。せっかくなので行くことにしました。

 

だって「廃墟」ってロマンがあるでしょう。そこに栄えていた何かが確実にあったのに、もうただのボロい遺構なんです。18世紀~19世紀のアーティストも、「ここには何があって、何が起きていたんだろうか」と想像しながら、幻想的な美しい絵を描いていたんだなと、ロマンはいつの時代も誰しも感じるのねと思いました。

 

廃墟のある風景を、夕陽をバックに美しく描いた作品もあれば、廃墟に想像でプラスアルファして、栄えていたであろう街道を蘇らせる絵も。廃墟に神話なども組み込んだ、とても抽象的な絵もありました。日本の作家による作品もありました。

 

展示の後半は現代の作家による作品も。国会議事堂がツタだらけの遺構になってしまう(まるでジャングルの中の寺院!)、人っ子一人いない渋谷の街など、「現代が廃墟になった姿」もユニークで面白かった。国会議事堂がツタだらけになっているのがナウシカみたいで。私たちの未来には国のハブ機能がどこかに移っていて、もしかして現代の中心地が人のたどり着かないマチュピチュみたいになる可能性だってあるわけだよ。面白いね。時間の感覚がちょっと歪みます。

 

美術館に行くとよく「リトグラフ」というものが出てきます。どうやら版画らしいというのはわかるのですが、違いがよくわからない。「エッチング」もそうですね。こっちは銅版画と補足されていることが多いですが、やっぱりよくわからない。

 

さっき調べてようやく、なんとなく、わかりました。

リトグラフってけっこうめんどくさいんだね…わかりやすい動画があったので貼っておきます。

www.youtube.com

 

これは銅版画のやり方動画。

www.youtube.com

 

油と水の違いを活かして特定の箇所のインクを入れる、溝を作ってインクを入れる。インクを入れる部分の作り方の違いなんだなとなんとなくわかりました。すごい面倒に見えるけれど、同じ絵を何枚もたくさん作ることができる、というのは、昔のアート業界ではかなり画期的な方法だったんだろうなぁ。

グーテンベルクによる活版印刷の発明は1445年ごろ。

一方でリトグラフの技術がヨーロッパに広がったのが19世紀ごろ。

文字を並べるのではなくて、一面の絵そのものをきれいに写す(しかも大量に!)というのはそうとう画期的だったんだなぁ。

 

脱線しましたが、版画の技術について学ぶことができたのでよかった。

 

廃墟ってやはり美しいよね。どうしても昔に思いを馳せてしまう。別に自分は歴史家でもないのに。同じ人間が数百年前にそこに生活していたんだ、というのが不思議な気持ちにさせられて。そりゃ絵にもしたくなりますね。展示には油絵とかもあったけれど、私はエッチングリトグラフの線画の美しさがすごく好きです。線で描かれるシンプルさ。

 

展示自体はこじんまりしていました。建物がやや小さかったからね。でも美術館の中心部がドーナツ状に吹き抜けになっていて、一階には噴水が。渡り廊下では噴水の音を聞きながら、空を見ることができます。冬の寒空の澄んだ空気にざーっと鳴り響く水の音がとても心地よかったです。小さな美術館ではあるけれど、建物のこだわりが随所に見られてとてもよかった。階段の照明ひとつひとつも影が綺麗に伸びて、素敵でした。

 

ワンコイン500円で見れるのもうれしい。もっと早く行っておけばよかったなぁ。

 

渋谷の文化村から神泉駅の方へ進んでいったところにあるので、やや住宅地エリア。静かな街並みに、こじゃれたカフェやバーがぽつぽつあるエリアなので、休日に人ごみをさけてゆっくりするにはいいところかもしれません。

 

とはいえ、リアルな廃墟もいきたいなーーーーーー