遠浅の好奇心

海・湖などで、岸から遠く沖の方まで水が浅いこと。そういう所。

赤、赤、赤、ぐらり。@豊島横尾館 ~瀬戸内旅行より~

先日、瀬戸内に行ってきました。

直島と豊島を回って、アートを楽しんで。穏やかな海に囲まれて、静かな空気に包まれて、のんびり楽しんできました。寒かったけど。

美術館について、1つずつブログに書こうと思います。(三日坊主にならないように…

 

追記※がんばって他にも記事書きました。 

habitaso.hatenablog.com

habitaso.hatenablog.com

habitaso.hatenablog.com

 

 

 

一番印象的だったのが、豊島にある「豊島横尾館」。今日はそちらについて。

まず、ぜひこちらの写真を見てください。

www.yukonagayama.co.jp

 

アーティスト・横尾忠則と、建築家・永山祐子による「豊島横尾館」は、豊島の玄関口となる港に面した家浦地区の、集落にある古い民家を改修してつくられました。展示空間は、既存の建物の配置を生かして「母屋」「倉」「納屋」で構成され、平面作品11点を展示しています。また、石庭と池、円筒状の塔にはインスタレーションが展開され、作品空間は敷地全域にシンボリックな拡がりをみせます。その空間は、生と死を同時に想起させる哲学的な場となり、さらに、建物には光や色をコントロールする色ガラスを用いて、豊島の光や風や色、作品の見え方をさまざまに変容させて、空間体験をコラージュのようにつなげます。 

 

豊島横尾館 | アート | ベネッセアートサイト直島

↑こちらより引用。

 

まず入口の赤いガラスが衝撃で。

赤いガラスを通して中庭が見えるんだけど、もう赤すぎて風景がモノクロなんです、ある意味。空も、庭も真っ赤。石が白く見える。濃い赤、薄い赤、白、みたいな。写真が撮れなかったのが残念。

 

古民家を改築、増築した建物です。倉、母屋、納屋を順繰り回ります。それぞれの建屋に絵画が飾られていて、絵を楽しめる。ただそれだけでなく、赤いガラスを通して差し込んだ自然光で真っ赤になった部屋の中で「通常に」ライティングされた色鮮やかな絵を見る、そんな体験もできます。平衡感覚がおかしくなりそうだった。自分の目の錯覚なのか、ライティングが正しいのか、何が通常なのか、わからなくなるんです。

 

最初の倉を通り抜けると庭に出ます。

入口の赤いガラスを通して見た真っ赤なモノクロ庭が、なんとびっくり、すんげぇカラフル。白い細かな石が敷き詰められた庭に、川が流れている。川底には鮮やかな青いタイルがモザイク調に並べられていて、タイルを見ているだけでも楽しい。川沿いに大小さまざまな石が立ち並び、なんと真っ赤に塗られた石がそこかしこに。そうか、だから赤いガラスを通してみると「白い石」に見えたのか、と納得。川をよく見ると鯉が何匹も泳いでいて、鯉は派手な生き物のはずが、派手派手な青いタイルの川底に紛れてもうよくわからない状態。目がちかちかするけどワクワクしました。

 

庭を抜けて母屋へ。母屋は靴を脱いで上がります。古い家だったんだろうなと、急な階段を上がりながら思う。2階に「網膜が見た夢Ⅱ」という絵が飾られていました。絵の中で光がじわじわと動いていて、目玉がぎょろぎょろ動き、魂が抜けていくように光が流れ、仏のような存在から何かパワーが流れ出し、光の効果がこれでもかと使われている面白い絵でした。平面とは思えない表現力。ちょっと気味が悪いのは事実だけど、なぜか目が離せない。輪廻を感じるっていうか、すべて回っているのね、というか。豊島横尾館自体が「生と死」をテーマにしていると後から知って、この絵が飾られた理由がわかった気がしました。

 

母屋の1階には床がガラス張りの空間があり、ガラスの下には先ほど眺めた川が流れています。青いタイルが鮮やかに足元を流れて、鯉がたゆたうように泳いでいく。足元の川から庭の方へ視線を上げると、赤い石の並ぶ庭。もう本当に、視界が飽きない。

 

ガラス床ゾーンを抜けると畳のお部屋に。正座して庭をゆっくり眺めることもできます。壁には特大の絵も飾られていて、迫力に打ちひしがれるもよし。

 

母屋の裏にはトイレがあって、そこも横尾風に!アクリル?鏡?よくわからないけどぐにょぐにょ曲がった金属に囲まれたトイレで、ぐにゃぐにゃに曲がった自分を眺めながら用を足すことができます笑 いやぁ、徹底している。

 

母屋の次は納屋。

大きな塔がくっついていて、遠くから見ても目立っていた部分。この塔は後から増築されたそうです。「滝のインスタレーション」とのこと。塔の中に入ると、広い!高い!天井も床も鏡張りになっていて、上下に空間が永遠に続いているように感じます。声も響くから思わず「あーーーー!」と叫んでしまった。壁中に滝のポストカードが貼られています。自分は友達と「これとそこの滝、同じじゃね?」と神経衰弱みたいに遊んでいました笑

上も下も細長~い中に自分がぽつんといて、ジャンプしたくなった。高さが本当にわからなかった。

 

塔を出て、納屋ではまた赤いガラスに包まれて、感覚がもうぐるぐるしてきていました。絵もサイケデリックなんだけど、倉や母屋で見た絵と似たモチーフが隠されているのを発見して、「あ、もしかしてつながっているのかも?」と気づいてわくわくしたり。「葬の館」という絵はガイコツもたくさんいるのになぜかかわいらしく感じてしまって。生きる、死ぬ、生きる、死ぬ、二分論では語れない、一緒くたに、ごった煮にして楽しんでいる自分がそこにいました。

 

納屋を出ると入口に戻ってきます。あれ、もう終わりか、とびっくりした。豊島横尾館自体はコンパクトなんです。その割には刺激を受け続け、あっちにびっくり、こっちにびっくり、入口の赤いガラス越しに庭を見てやっぱり「全然違う!」とまたびっくり。五感フル回転。もう一周したいくらいだった。鑑賞料金は510円とお安いので(建物のサイズが小さいからかな)、ケチらずにもう一周してもよかったかも。

 

サイトの文章を見ると、夕陽が差し込む時間帯にはまた違う見え方がするとか、時間帯を変えて楽しむこともできるそう。写真撮影NGは残念ですが、冒頭のリンク先で写真がたっぷり見れるので、そちらで現場をイメージしていただければと。

 

豊島横尾館」という名ではあるけれど、建築家の永山祐子さんの役割も相当大きかったんだろうなと思いました。だって回るの楽しかったんだもの。横尾忠則さんとどういうコラボをしながらこの建物ができたのか、展示が設計されたのかまではわからないけれど、ただ絵を楽しむのではなく、目を中心に全身で「空間」を楽しめたように思います。

 

アートの観光地的な盛り上がりで言うと直島>豊島という感じですが、瀬戸内に来るならぜひ「豊島横尾館」は行ってくれ!と私はおすすめしたいです。

 

ああああ、赤いガラスが目に焼き付いている。