ユニーク、独特、「何故か面白い」:奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド@東京都美術館
東京都美術館で「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」という展示を見てきました。
以下、HPより引用。
美術史家・辻惟雄氏(1932〜)が、今から半世紀近く前の1970年に著した『奇想の系譜』。そこに紹介されたのは、それまでまとまって書籍や展覧会で紹介されたことがない、因襲の殻を打ち破り意表を突く、自由で斬新な発想で、非日常的な世界に誘われる絵画の数々でした。それから半世紀近くたった現在では、かつては江戸時代絵画史の傍流とされてきた画家たちが、その現代に通じる革新性によって熱狂的ともいえる人気を集めています。
本展では『奇想の系譜』で取り上げられた6名の画家、岩佐又兵衛、狩野山雪、伊藤若冲、曽我蕭白、長沢芦雪、歌川国芳の他に白隠慧鶴、鈴木其一を加えました。
8名それぞれの画家の作品を厳選し、近年の「若冲ブーム」、「江戸絵画ブーム」、ひいては「日本美術ブーム」の実相をご存じの方にも、またこの展覧会ではじめて魅力的な作品に出会うことになる方にも、満足していただける内容を目指しました。現代の私たちの目を通して、新たな「奇想の系譜」を発信することで、豊かな想像力、奇想天外な発想に満ちた江戸絵画の新たな魅力を紹介します。
長々と引用しましたが、とにかく奇想天外の「奇想」です。ユニークな絵がいっぱいでした。
伊藤若冲は最近ブームになっているので名前を聞いたことがあるのでは。逆に、名前は知らなくても「この絵見たことある!」という作品もあるはず。エッジのきいた作品がごった煮のように並べられて、とても楽しい展示でした。
会場では、8人の作家の展示スペースが順番に並んでいました。1人ずつ作品群を見ていく形。展示スペースの頭に作者のプロフィールや作品の特徴、後世に与えた影響などがまとめてあります。そこでそれぞれの特徴を頭に入れてから作品を見ると、なるほどなぁとなるわけです。
展示作品は絵がメインですが、ダイナミックな屏風が何点も飾られていて迫力があります。普段はお寺の襖になっている襖絵も展示されていて、思わず離れて全体像を楽しみたくなる。近くで繊細な技を見てもよし、ダイナミックな迫力を離れて味わうもよし、いろんな見方で楽しめる。
多少混雑していましたが、ガラスに張り付かないと見れない、というほどの混雑でもなく。また作品がまぁまぁ大きいので皆さんそれぞれの視点で鑑賞しており、ある程度動き回ることができました。私が行った日があいにくの雨で、少し混雑緩和してたかもだけど(気のせいかな?)。
以前開催されていた「禅」がテーマの展示、渋谷の文化村で開催された歌川国芳の展示に行ったこともあり、今回いくつかの作品に再会できました。それも嬉しい体験だったなぁ。また会えたね!って感じ。(ちなみに以下の展示です)
8人それぞれの作家の詳細は公式HPにしっかり記載されているので、自分が気になった作品をいくつか。
■《相馬の古内裏(そうまのふるだいり)》歌川国芳
作家と作品 | 【公式】奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド
↑こちらのリンクの2枚目
ガイコツで有名な1枚。前に文化村で見たことがありましたが、何度見ても迫力がある。おどろおどろしさ。絵自体はそんなに大きくないのに、ここに広がっているファンタジーな世界は「どん!」と来るものがあります。ちなみにこの大きなガイコツを操っているのは、絵の左側にいる瀧夜叉姫(たきやしゃひめ)という女性。妖術を操るこの人は、平将門の子供(伝説上の人物です)。真ん中にいる武士がそれをやっつけにきた、という場面です。
■ 《達磨図(横向き達磨)》白隠慧鶴
作家と作品 | 【公式】奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド
↑こちらのリンクの3枚目
タイトル通り、達磨の横顔。筆で荒々しく描いているのに、なぜか愛らしい気もするのは私だけ?ちょっと見た目は怖いけど、話したら気のいいおっちゃんなんじゃないか、そんな風に思ってしまいます。書いてある字は「どふ見ても」だそうです。
白隠慧鶴は達磨など禅画をたくさん描いたお坊さん。他にも達磨像がいくつかありましたが、どれも個性的かつユニークで面白かった。
■《夏秋渓流図屏風》鈴木其一
作家と作品 | 【公式】奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド
↑こちらのリンクの2枚目
これPCやスマホで見るとあまりわからないんだけど、青がめちゃくちゃ鮮やかで綺麗なんです。ここまでビビットにしちゃってよかったの?!って驚くくらい明瞭な青。水が手前に押し寄せてくるように感じます。金箔のきらきらする背景の一方で、塗りつぶしました!って感じの群青のギャップがすごい。
■《富士・三保松原図屏風》曽我蕭白
作家と作品 | 【公式】奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド
↑こちらのリンクの4枚目
右側の虹の遠近感にすごく違和感があって引っかかる。左端には頂上が独特な富士山。錯視のような感覚になる。面白いな~
■ 《白象黒牛図屏風》長沢芦雪
作家と作品 | 【公式】奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド
↑こちらのリンクの1枚目
これめちゃくちゃでかい屏風です。途中はほぼ真っ白orほぼ真っ黒。象のボディと牛のボディ。離れて見ると、黒と白の対比が面白い。色がくっきりはっきりついているわけではないんだけど。そして奇想の系譜展公式Twitterアカウントのサムネイルにもなっている、牛にちょこんと寄り添う白い犬は必見です。ポメラニアンか!とネットがざわついているw すごく現代的にかわいいww
■《唐獅子図》曽我蕭白
作家と作品 | 【公式】奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド
↑こちらのリンクの5枚目
これもでかい!そして迫力!破天荒ってこういうことねって感じ。阿吽の声が聞こえてきそう。ダイナミックでかっこいい。筆の勢いが見える。
他にもいろんな作品がたくさん。このサイトも絵が見やすいかな。
たぶん伊藤若冲だったのですが、虎の絵がありまして。でもどうにも肩まわりや足が猫っぽくないというか、人間ぽい。笑 実物見たことなかったんだろうなあ…。なんだかバランスが悪くて、ある意味珍しいものを見た気分。
『洛中洛外図』もありましたが、もう細かすぎて見えないw あれはガラスに張り付いてじっくり時間かけて見ないと楽しめないね。混雑のため自分は諦めて流し見…。『ウォーリーを探せ』に近いものがある←
Eテレの人気番組『びじゅチューン』の元ネタになっている絵もいくつかありました。
『武蔵の遅刻理由』『龍虎旅館』『洛中洛外シスターズ』という曲はぜひ聴いてみよう!今回の展示に関係あります。
ざっと箇条書きと余談でまとめました。相変わらず長い。
公式サイトや検索して出てくる画像以外にも、大きなもの、繊細なもの、ユニークな作品がたくさんあります。展示替えもあるようですし、ぜひおすすめします。アートの細かいことを知らなくても、絵自体で楽しめるはず。色がビビットだったり構図が独特だったり、とにかくインパクトが強かったり、必ずどこかに目が取られますので。
写実的で美しいとか、荘厳だとか、そういう絵ももちろん素晴らしいけれど。「なんでこうしたんだ」「これどういうこと?」「なんだかよくわからないけど面白い気がする」そういうアートはとても好きだなぁ、と再確認しました。
おしまい。