遠浅の好奇心

海・湖などで、岸から遠く沖の方まで水が浅いこと。そういう所。

絢爛豪華だけどチューリップが愛らしくて:トルコ至宝展@国立新美術館

国立新美術館で「トルコ至宝展 チューリップの宮殿 トプカプの美」という展示を見てきました。

turkey2019.exhn.jp

 

以下、HPより引用。

アジアとヨーロッパにまたがる交易の要地・トルコは、多様な文化を受容・融合し、比類ない美を育んできました。
本展では、イスタンブルトプカプ宮殿博物館が所蔵する貴重な宝飾品、美術工芸品をとおして、花々、とりわけチューリップを愛でた宮殿の生活、オスマン帝国の美意識や文化、芸術観を紹介します。

また、オスマン帝国のスルタンと日本の皇室の交流を示す品々のほか、
明治期の日本美術品を里帰りさせるなど、両国の友好関係にも光をあてます。 

 

駅で見かけたポスターを見て知りました。ポスターに写っていた「ターバン飾り」があまりに美しくて、黄金に大きな宝石がたくさんついていて。なんと絢爛豪華なのかと。ヨーロッパとアジアの境目にあるトルコ文化にはミステリアスな魅力があって、前から気になっていました。どれどれとHPを拝見。豪華な品々もたくさん展示されるではないですか!Twitterを見る限りそんなに混んでなさそうだし、穴場の予感がしてました。

 

展示は3部構成。

第1章 トプカプ宮殿とスルタン

第2章 オスマン帝国の宮殿とチューリップ

第3章 トルコと日本の交流

 

もう、絢爛豪華(2回目)。柄がエメラルドでできているナイフ(刀)とか展示されてるんですよ。こんな大きなエメラルドあるんかいっていう…。あと展示でポイントとなっているチューリップ(後述)。そのおかげで、スルタン(王様、将軍のようなもの)の調度品が豪華なのにかわいらしく、愛らしくなる。ただただ豪華なだけではなく、オスマン帝国の王室が大事にしていたものが伝わる展示でした。

展示の仕方も凝っていて。「トルコっぽい!」と言えるタイル模様をプリントして壁に貼って、まるで宮殿の中にいるような見た目にしたり。宮殿の門に描かれている飾り文字をアーチ状に飾って、来場者が門をくぐって進んでいく演出をしたり。壁に飾り窓を開けてそこに展示物を飾ったり。宮殿の雰囲気を伝えようとする、主催者側の気持ちや努力が伝わってきました。

 

順に気になったところの感想をば。

 

■第1章 トプカプ宮殿とスルタン

ここはとにかく豪華。もう宝石の量がすごい~。金銀はもちろん、ダイヤモンド、エメラルド、ルビー、サファイアトルコ石、サンゴ、ヒスイ、象牙。ターバン飾りや、刀、指輪、とにかく豪華な調度品の数々に、「ほえ~~~」と独り言を言わずにはいられませんでした。玉座の上に吊るされる「吊るし飾り」が展示されていたのですが、どでかいエメラルドが3つ連なって、もう感激です。う、美しい…。ここまで宝石つけなくてもいいんじゃない?と言いたくなるくらい宝石だらけなものもありましたが笑 でもキレイでとても素敵でした。人間はなぜこんなにも宝石に魅せられてしまうのかしら。

あと入場して一番最初にある5分ほどの解説映像。これが4Kで撮影されたもので、海辺のトプカプ宮殿がとても綺麗に映されていました。映像でも感動。

第2章中盤の話ですが、中国から輸入された陶磁器もありました。なんとその陶磁器に宝石を金で貼りつけて加工していて!青と白のいわゆる「陶器」に、たくさん宝石がちりばめられていたんですね。ここまでやるか、とちょっと笑ってしまいました。確かに、スルタンの調度品に比べたらアジアの陶器はおとなしい印象だからね。バランスを取ろうとしたんでしょうか。

 

■第2章 オスマン帝国の宮殿とチューリップ

ここでチューリップにフォーカス。

以下HPより。

チューリップはトルコ語で「ラ一レ(lâle)」と言います。
オスマントルコ語の表記に使用されていたアラビア文字で、ラ一レの綴りの文字配列を変えると、イスラム教の神のアッラーという言葉になり、さらにはアラビア文字で表記されたラ一レを語末から読むとトルコ国旗のシンボルでもある三日月(ヒラール)という言葉に変わるのです。
そのような事情から、チューリップは花として愛されただけでなく、宗教的、国家的な象徴としても崇められ、チューリップヘの畏敬を表した品々が数多く作られるようになります。

チューリップにそんな意味があるとは知りませんでした。「チューリップといえばオランダでしょ」と思っていたので、トルコでもこんなに重宝されていたとは。解説にあるように「三日月」の意味合いもあるせいか、オスマン帝国では細長い品種が愛されたようです。本や陶器に描かれているチューリップは、つぼみが咲ききっておらず細長くすら~っと伸びているものが多い。くびれすら感じる。当時の人々はそこに美しさや尊さを感じたんだろうな。

スルタンのカフタン(上着、コートみたいなもの)は刺繍が美しく、チューリップのモチーフがたくさん。こんなに大きくたくさんのチューリップを描いたものを帝国のトップが着ていたというギャップ。でも絵というよりもはやモチーフになっていて、デザインとして確立していたようです。チューリップ柄の革靴は現代でも通用するほどかわいかった!

スカーフやクッションカバーなど繊維製品の展示もたくさんされていて、本当に保存状態が良いなと。日本の明治時代ごろ、100年以上前のものがほとんどなのに、虫食いもなく綺麗に残っていることに驚きました。宮殿で大事に保管されていたんだろうね。子供用の服も展示されていてかわいかった。スルタンのズボンがブカブカすぎる件はどこにツッコんだらよかったんだろうか。

そしてチューリップ用のガラス製花瓶。チューリップを美しく立たせるために、細長いデザイン。土台部分は水を貯めるために瓶らしく丸みを帯びているのですが、そこからぐっと細くなる花瓶の美しさ。チューリップ1本しか入らない、ほんとに。花瓶自体にも繊細な模様が施されていて、カラフルなチューリップとガラス花瓶の組み合わせはそれは美しかったんだろうなと…。組み合わせのセンスも問われたのかな。

 

■第3章 トルコと日本の交流

ここの展示はスペースとしては比較的コンパクト。日本からオスマン帝国に献上された品々が日本に里帰りした、という感じ。トルコ至宝展なのになぜ日本の鎧兜があるんだと言いたくなりました笑 当時こんなものまで持って行ったのね。

私の身長くらい大きな有田焼の壺も。昔撮影されたトプカプ宮殿内の映像が流れていたのですが、当時の宮殿の廊下にででーんとこの壺が並んでいる様子が収められていて、「これじゃん!」という驚き。今回の展示のために日本にわざわざ持ってきて、いや、遠路はるばる来てくれてありがとうという気持ちです。

 

全体的に展示物自体が美しくわかりやすいので、解説の文言は少な目だったと思います。でもちょうどよい量でした。比較的空いていたので、解説文を読むために並ぶ、ということもなく。ところどころ、当時の様子を描いた絵の印刷を展示して「これはここに描かれています」と目で見てわかりやすい解説がしてあったのも、来場者に優しくてよいなぁと思いました。

 

いや、なぜ混んでないんだという穴場感。宝石もっと眺めてくればよかった。

ここに書いたのは展示のごく一部です。歴史に詳しくない人でも楽しめます。ただただキレイで心が満たされます。わかりやすいし、ぜひおすすめします。

穴場だぞ!ほんとに!!もう!!!