遠浅の好奇心

海・湖などで、岸から遠く沖の方まで水が浅いこと。そういう所。

NHKで6時間て。~「朝まで「大人計画テレビ」~松尾スズキと25人の仲間たち~」~

NHKBSでやってた「朝まで「大人計画テレビ」~松尾スズキと25人の仲間たち~」を録画して見ました。

www6.nhk.or.jp

 

なんとたっぷり6時間!松尾スズキが主宰する劇団(?)「大人計画」を創成期から振り返るこの番組。

大人計画の演劇は見たことないのですが、松尾スズキ宮藤官九郎阿部サダヲ星野源荒川良々など有名でエッジの効いた人がたくさん出ると知って録画。大人計画の所属俳優を見ると、あの人も、この人も、脇役で見たことある!という発見も多く。録画してちょこっとずつ見ました。大人計画のメンバーが全員揃うことは初めてだそうで、だいぶ貴重。NHK攻めてるな。受信料払っててよかった。

 

番組の流れは、大人計画の成立から現代までを徐々に振り返りつつ進んでいく。加入した順にスタジオのひな壇にメンバーが増えていき、それぞれ加入のいきさつを語る。過去のVTRを振り返ったりミニコーナーを挟んだり。NHKの過去のアーカイブ映像も蔵出し。6時間分見終わりましたが、飽きが来なかったのは少しずつ見たからか、それともコンテンツ(大人計画)が強すぎたからか。

 

演劇には縁のない生活をしてきたので、劇場に足を運んで観劇した経験はほとんどありません。ロンドンに旅行したときにミュージカルを見たものの、あまり感情移入できず。舞台を見るのは向いてないかも、とそのとき思ってしまったくらい。

 

一方で大人計画は演劇だけではなく、ドラマや映画、コント、グループ魂のようなバンド活動まで幅広いエンターテインメントを提供しているので、(いい意味で)軽い気持ちで番組を見ることができました。

 

松尾スズキが過去に出演したNHKの「トップランナー」(情熱大陸のスタジオ版みたいなやつ)もまるっと放送。当時37歳の松尾スズキは全然偉そうじゃなく、演劇論を熱く語る体育会系でもなく、ただただ「自分が面白いと思うことをしたいだけ」というスタンスが押しつけではなく伝わって。一緒にいると気を遣いそうだけど、暑苦しくなくて一緒に何かしたくなる人なんだろうな、と漠然と感じました。

 

もやもやと煙に巻くような人だけれど、言いたいことは言うひとなのかしら。ぼそっと言う言葉が、芯を捉えているようでビクっとさせるのかしら。どうにも気になる人です。

 

スタジオコーナーでは、大河ドラマ主役の阿部サダヲ、もはや有名アーティストの星野源もひな壇2~3段目に座るという、珍しい形w この番組でしかできない扱いでは…。その様子自体が見てて面白かったです。メンバーそれぞれの大人計画に入ったいきさつも個性があって、人生っていろいろ。80年代の小劇場ブーム、実際にその年代に自分が生きていたら見に行っていたんだろうな。その時代を感じたいと思いました。脱サラして役者になる人もいるんだもの。そういう衝撃が日常に足りない。

 

6時間の中に、「大人計画フェスティバル」密着特番の再放送がありました。HPのタイムラインにも記載されています。

名作選「18年目の学園祭~大人計画フェスティバル」(2006)
伝説の番組です。語りは、俳優・大沢たかおさん。

大人計画フェスティバルは、多摩市の廃校になった小学校を使って開催された大人計画主催のフェス。体育館でのバンド演奏あり、お化け屋敷あり、フリマや屋台もあり、文化祭のようなもの。当時25000人集客したそう。すごいね。

 

この番組での大沢たかおの使い方がすごかった。すっかり騙された笑。

以下ネタバレ注意。

 

 

 

ナレーションを務める大沢たかお、「かつて大人計画に在籍していた」という体でこの番組に出てきます。「自分は途中で逃げ出した人間だ」と悔いるような語りも込みで、このフェスを見ていくわけで。大人計画メンバーへのインタビューでも「当時の大沢たかおの印象は?」と聞かれてみんなそれっぽい回答をするわけですね。「一重を気にして眼鏡をしていましたよ」とか、「稽古場よく間違えてましたね」とか、「役をもらえなかったのを気にしていたみたいだ」とか。真面目な顔で答えているわけです(後から考えるとちょっとおかしいな、と思うんだが)。

 

これを見ていた自分は「大沢たかおってそういう一面もあったのか」とまともに見てしまったのですが、さすが大人計画。番組の最後に、「大沢たかおさんに関する部分は全てフィクションです」とテロップが流れました。

 

嘘なんかい!!!すっかり騙されました。まともに見た自分がバカだった。一人で家で見てたのに思わず声が出た。10年以上前のTV番組に騙される自分…風化しないギャグセンス…。

 

 

 

松尾スズキは演劇を本格的にやっていた人ではないと。脱サラして劇団を立ち上げて、素人ばかりでやったんだと。劇団を立ち上げた理由も、当時付き合っていた彼女に「あなた演劇好きって言ってたんだからやればいいじゃない」と言われて「やってみるか」と思ったからだと。

 

熱くないから、今目の前の気になることややりたいことに忠実になれるのだろうか(あんまり「熱くない」って言ったら怒られるかな、本人は熱いかもしれないし)。

 

熱いと他人にも厳しくなるし周りからの評価にも敏感になるし。熱いほうが「認められたい欲」が出る気がするのね。「熱い」って、自分の正当性を訴えたい、認めさせたいってことだから。松尾スズキからはそういう押しの強さは感じられなかったな、それが心地よかった(楽だった)なと、番組を見ていて思いました。

 

自分は基本的に自信がない人間なのですが、たまに調子のいいときには自信満々になって偉そうになってしまうときがあります。そういうときはたいてい熱いヤツになっている。リーダーシップや勢いが歓迎されることはあるけれど、一方で押しつけがましくなっていたり焦りが出てしまったり、後でほころびが出てくる。

 

 

一緒にいてくれる人たちにとって、楽(らく)な人間でありたいと改めて思いました。

「面白く」もセットで。