遠浅の好奇心

海・湖などで、岸から遠く沖の方まで水が浅いこと。そういう所。

幾何学立体模様:松方コレクションと建物それ自体について@国立西洋美術館

コルビュジェ展に行って、国立西洋美術館の建築や歴史がとてもよかったので別で記事を書きます。

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コルビュジェ展については以下記事参照。

habitaso.hatenablog.com

 

国立西洋美術館は上野にございます。コルビュジェ展(企画展)からそのまま常設展に繋がっていたので、そちらもふわーっと見てきました。集中力が持たなかったのでそんなにじっくり見れなかったけど…

 

絵や彫刻などヨーロッパの作品が多く展示されています。借りてきた作品はどこの美術館所有のものかが書いてあるのですが、作品のほとんどに「松方コレクション」と書いてあってなんだろう?と。HP見たらよくわかりました。

www.nmwa.go.jp

要約しますと、

  • 大正~昭和初期に活躍した資産家である松方幸次郎氏は、ヨーロッパで多くの美術品を買い集めていた。日本の美術界の未来のために、日本に美術館を作ろうとしていた。
  • しかしその後の恐慌や戦争でコレクションは散逸。美術館は建設できず。
  • ロンドンに保管していた美術品が火事で焼失。フランスに保管していたものは無事に残る。
  • 第二次世界大戦後、松方氏のコレクションはフランス国有のものとなる。その後の日仏の交渉で「松方コレクション」として寄贈返還されることになった。
  • ただし返還の条件として、「日本側が東京にフランス美術館を創設すること」がフランス側から求められる。
  • ル・コルビュジエ、また日本側協力者として坂倉準三、前川國男、吉阪隆正が建設責任者として決定。
  • 1959年、国立西洋美術館開館。

 

美術館ができた経緯が、フランスからの要求だったというのが驚きでした。「これだけの美術品を展示するにふさわしい建物を、お前ら作れんのか」ということでしょうか。コレクションはロダンの彫刻や、有名なモネの《睡蓮》など確かにヨーロッパ顔負け。松方さん、どれだけのお金をかけて集めたんでしょうか。国立西洋美術館に行っても企画展しか見ないことが多いので、常設展のすごさは今回初めて知りました。常設展だけ今度ゆっくり見ようかな。

 

コルビュジェの手がけたこの建物、以下の通り貴重で珍しいとのこと。

ル・コルビュジエの設計のもと、パリで彼に師事した前川國男、坂倉準三、吉阪隆正という3人の日本人建築家の協力により完成した国立西洋美術館本館は、所蔵品が増えるにつれて建物が中心から外へ螺旋状に拡張する「無限成長美術館」のコンセプトに基づいています。実現した例は、国立西洋美術館を含めて世界に3つしかありません(ほか2館はインドのアーメダバードとチャンディガールに建設)。

本展について | ル・コルビュジエ 絵画から建築へ―ピュリスムの時代

 

特徴もHPにしっかりまとまっています。

ル・コルビュジエ建築の特徴は、ピロティー(柱)、骨組みと壁の分離、自由な平面、自由な立面、屋上庭園にあります。当美術館の本館はこれらに加え、展示室の中心にスロープで昇っていく渦巻き形の動線に特徴があります。

美術館の建物|国立西洋美術館

「スロープで昇っていく渦巻き形の動線」を、今回は特に体感できました。吹き抜けの壁にスライドショーでコルビュジェ建築の写真が流れていくので、必然的に上を見上げることになる。そこにある三角形の明かり窓、そこへ伸びていくまっすぐな丸い柱、柱から四方向へわかれる支柱(?)。三角形の窓から天井の凹み方も、直線を結んだ三角錐みたいになっていて見ていてきれいでした。幾何学的な立体模様を見ている気分。

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スロープを昇って別のフロアに移動したはずなのに、もとの吹き抜け空間をちょっとだけ覗けるスペースがところどころにあって。穴で全体が吹き抜け空間に繋がっているように思えました。天井が低い空間と高い空間もバラバラだったり、仕切りでもない壁が突然現れたり。自分が今建物のどこらへんにいるのか、よくわからなくなった。

 

館内に階段もいくつかあったのですが、残念ながら進入禁止。コルビュジェの気持ちを考えながら、フロアを上下に移動したかったなぁ。

 

日本にこんなにユニークな建築があるとは知りませんでした。今回はコルビュジェ展ということもあって、フルに建物を活かしたんだろうなぁと。前にアルチンボルド展で国立西洋美術館に来たときは、こんな印象なかったもんな。展示室がそもそも違かったのかな?

 

日本の美術を育てようとした松方さんに、感謝であります。ここに限らず、常設展をちゃんと見てない!ということはよくあるので、今度は常設展もしっかり見よう、常設展のために美術館に行こうと思いました。建物ももちろん楽しんでね。