遠浅の好奇心

海・湖などで、岸から遠く沖の方まで水が浅いこと。そういう所。

問わず語りの心が切ないね~ルビーの指環~

幼稚園くらいに小さい頃、なぜか『ルビーの指環』という曲を歌えていた。世代からして合わない昭和の歌謡曲寺尾聰の名曲。さっきwikipedia見たら、ビルが建つほど売れたらしい。

ルビーの指環 - Wikipedia

曲の入りが独特なリズムで、声も印象的だったから覚えていたのかもしれない。

 

なぜ覚えていたかと言えば、母が車の中で流していたからだった。

私の育った田舎は車移動が基本。少し離れた祖父母の家にも、近所のスーパーへも、車の後部座席に乗せられていった。運転する母は自分の好きな曲をかけていたようだ。歌番組でよくある「昔のヒット曲特集」で『ルビーの指環』が流れるたびに、「なぜか知ってるんだよなぁ」と思っていたら、親がよく聴いていたのだった。母は、「子供の好きな曲じゃなくて自分の好きな曲だけかけてたわ、ゴメンネ」とアハハと笑っていた。

 

初めてしみじみと歌詞を読んだ。

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男女の別れの歌です。フラれた男が、喫茶店から出ていった彼女を寂しく見送っている。情景がきれいに浮かぶ歌詞。歌詞といえばの松本隆。さすがの詞です。

「そうね 誕生石ならルビーなの」

幸せだった頃がわかる表現がこの一行に詰まっているのが、すごいなぁと思いました。その頃を思い出しているんだな、というフラれたその時の気持ちがリアルタイムに伝わる構成もすごい。

 

『プレバト!』という番組でよく俳句対決をやっていて、そこで解説の先生がよく言っています。「情景が目に浮かぶ表現をしなさい」。『ルビーの指環』は、情景が見えるし聞こえるし時間の経過も感じる、そんな歌だなと思います。盛り上がる歌ではないのにこんなにたくさんの人に聴かれたということは、思わず感情移入したくなるような歌だったんでしょうか。つぶやきたくなる歌だね。歌いたいっていうより、つぶやきたい。

 

歌は元気をもらうだけじゃなくて、寄り添ってもらう歌もあると思っていて。寂しい気持ちのときに無理に励まされると返って辛いじゃないですか。寂しかったり悲しかったりするとき、「そうだよね、わかるよ」と同じトーンの歌の方が励まされることもあるよね。

 

今の自分はどんな歌が聴きたいかなぁ。別にフラれたわけじゃないけど、少し自信がなくて寂しい気分なので、『ルビーの指環』を久々に聴いてみようと思います。

 

「くもり硝子の向うは 風の街」

 

どんな風が吹いているのか。