目を奪われるけど見つめることはできない美しさと不思議さ~クリムト展@東京都美術館~
以下、HPより引用。
19世紀末ウィーンを代表する画家グスタフ・クリムト(1862-1918)。華やかな装飾性と世紀末的な官能性をあわせもつその作品は、いまなお圧倒的な人気を誇ります。
没後100年を記念する本展覧会では、初期の自然主義的な作品から、分離派結成後の黄金様式の時代の代表作、甘美な女性像や数多く手がけた風景画まで、日本では過去最多となる油彩画25点以上を紹介します。
ウィーンの分離派会館を飾る壁画の精巧な複製による再現展示のほか、同時代のウィーンで活動した画家たちの作品や、クリムトが影響を受けた日本の美術品などもあわせ、ウィーン世紀末美術の精華をご覧ください。
駅のポスターで《ユディトⅠ》を見かけて、黄金がきれいだなと思って気になっていました。女のひとの表情が「恍惚…!」って感じで目が奪われた。
日曜日の午後、チケット買うのに10分ほど並んで。中はそこそこ混んでました。見れないほどじゃないけど、小さい絵や写真はちょっと見るのが大変かも。
展示は以下8つに分かれて構成されています。
Chapter 1. クリムトとその家族
Chapter 2. 修業時代と劇場装飾
Chapter 3. 私生活
Chapter 4. ウィーンと日本 1900
Chapter 5. ウィーン分離派
Chapter 6. 風景画
Chapter 7. 肖像画
Chapter 8. 生命の円環
メインどころの作品は公式HPに解説つきでしっかり載っています。気になる絵は事前にチェックしてから行くとよいかも。以下、感想をつらつらと。
・劇場の装飾という仕事
絵で有名な人でもいろんな経歴があるんだなと改めて思った。演劇が娯楽として強かった時代というのもあるかもしれないけど、有名になる前は「劇場の装飾」をしてて、さらにそのときのデッサンとかが残っていて後々展示される、というのがすごいよね。歴史とは残るものだなぁ。絵とは違って、柱や壁、建物に描くから、デッサンには手書きで方眼紙の線が細かく書いてあって、アートといえど実用性を感じて面白かった。
・モテる人生と女性の肖像画
多くの女性とクリムトは関係を持っていたようで、写真も多く展示されていました。イケメンだったのかしら。顔の作りや好みがアジアとは違うだろうから、そのあたりはよくわからない。女性の肖像画も多く展示されていましたが、どの肖像画も美人で、どこかエロティックな魅力があって、生々しい生きてる感じ、見つめてくる感じがあるんだよね。こういう絵を描いてくれるなら、クリムトに惹かれてしまう女性の気持ちもわからんでもない…か…?でも当時のラブレター(現物)まで展示されちゃって、恥ずかしいだろうな。
・日本の影響
「トルコ至宝展」でも日本との関わりがしっかりと展示されていましたが、こちらでも1コーナー作ってありました。日本の浮世絵がヨーロッパに与えた影響はやっぱり大きかったんだね。着物の柄や浮世絵はクリムトにも影響を与えたようです。関連して日本の器や版画も展示されていて、その中で『二匹の金魚』というシンプルな版画が展示されていました。赤い金魚が綺麗で、それを見ていた小学生くらいの男の子が、一緒に来ていたお母さんらしき人に向かって、「当時は多色刷りだから赤と黄と●●を重ねるのが普通だから…」としっかり基礎知識の解説をしていて、詳しい子供っているんだなぁと驚きました。ぜひ日本の芸術界を引っ張っていってくれ。
※トルコ至宝展についてはこちら
・ユディト、ヌーダ・ヴェリタス(裸の真実)
大きな作品でした。女性の表情に目が行ってしまうので解説を読んで気づいたのですが、絵の下の方に男の生首が描いてある。女性はその首を持って微笑んでいる。それを思うと、微笑みの不気味さ、美しさ、どんな感情なんだろうという気持ち、ごっちゃになって混乱します。金箔がきれいだな、と思っていたけど、そのキラキラが「ギラギラ」に感じてくるし、女の怖さも語っているように感じました。でもとにかく美しかった。
ヌーダ・ヴェリタスも隣に展示。こちらも大きな絵で、淡い水色と黒の入り混じり具合が絶妙。女性の表情がこちらもなんとも言えない。どうしてこんな顔を描けるんだろう?
・分離派展ポスター
1900年ごろのポスター特有のモダンでシンプルなかっこよさってなんなんだろうね!すごく好き。字のフォントもよい、余白も素敵。絵がゴテゴテしてなくて、線でくっきりあっさりしている。
・ヘレーネ・クリムトの肖像
おかっぱの女の子。白い服がとてもかわいい。前髪ぱっつんもかわいい。恍惚感満載のユディトとは全然違ってナチュラルな風合いでした。
・ベートーヴェン・フリーズ(原寸大複製)
これは見応えがあった。ベートーヴェンの交響曲第9番(通称「第九」、年末に合唱でよく歌う曲ですね)をもとに作られた作品。もとは部屋を囲う壁画だったそうで、曲の展開に合わせて壮大な絵が描かれていました。展示スペースには小さめの音量で第九が流れていて、展示の仕方もよかった。絵の最後は天使の合唱と男女のキスが描かれてクライマックスなんだけど、盛り上がり方が伝わる。歓喜の歌!嗚呼!
・クリムトが発行した『ヴェル・サクルム』という雑誌
クリムトが発行した雑誌だそうで。そういえばコルビュジェ展でも、コルビュジェが発行した雑誌が展示されていました。時代的に、自分たちが発信したいことを「よし、とにかく発行だ!」という発想になりやすかったんだろうか。あと雑誌を発行するハードルが低かったんだろうか。今みたいにネットは無いし書籍が情報源だから、発信も受信もしやすかったのかしらね。時代の違いを感じます。
※コルビュジェ展についてはこちら
・生命の円環
最後のスペースでは輪廻転生というか、壮大でおどろおどろしい絵が多かったです。大学に依頼されて作ったとされる《医学》《哲学》はちょっと怖いくらいでした。大学側からは「こんなの展示できるか(意訳)」と言われて結局展示できなかったそう。《女の三世代》《家族》はテーマは共通している気がするんだけど、どこか寂しさや儚さがあって、見ていて胸がぎぅぅとなる感じがしました。ずーっと見るのはちょっと辛いというか。
・HPとお土産がなかなか充実している
このブログを書きながら公式HPを読み返していたら、特別企画がけっこう充実してて驚きました。『現代クリムト講座』という企画は、コルクの佐渡島さんなど有名な人のインタビューもしていて、10記事も公開している(アプリ入れないと読めないけど、なので自分は読めてない)。堅いだけじゃなくて、クリムト作品ぽい色合いのネイル「クリムトネイル」ができるクーポンもあったり。
お土産コーナーでびっくりしたのが、クリムトのソフビ人形w クリムトの写真の立ち姿そのままに、ソフトビニールのミニチュア人形が売っていました。誰が買うんだ…。お店に「作っちゃいました!」という製作時のエピソードが他の商品よりもしっかりめに書いてあったので、担当者の肝いりな企画だったんだろうなと思いを馳せました。笑 嫌いじゃない!そのこだわり嫌いじゃないよ!
あまりまとまりがないですが、とりあえず行ってよかったです。絵の美しさと不思議さをミックスして鑑賞できました。東京都美術館はいい展示をやるよねぇ。しょっちゅう行ってる気がします。
ブログがサボり気味になってしまったので、しっかり更新できるように気を引き締めようと思います。